私はこれまで、ユーザー系SIerで6年、中堅IT企業で3年勤務した後、事業会社(いわゆるJTC)へ転職しました。現在はDX推進部門のマネジャーとして、IT投資の企画やプロジェクト推進、組織マネジメントを担当しています。
転職前は、
- 事業会社は安定していそう
- IT予算を自由に使える
- 働き方も柔軟そう
というイメージを持っていました。
しかし実際に入社してみると、よい意味でも悪い意味でも想像と異なる点が数多くありました。
この記事では、SIer・IT企業出身者の視点で、事業会社へ転職して初めて分かった10の現実をお伝えします。
なぜ私は事業会社へ転職したのか
1社目では製造業系のユーザー系SIerに勤務し、保守運用、ヘルプデスク、小規模開発、プロジェクトリーダー業務を経験しました。
ERP刷新プロジェクトに参画した際、一緒に働いたコンサルタントの推進力に強い衝撃を受けました。
「システムを作るだけではなく、自身の意見をしっかり持って変革をリードする人になりたい」
そう考えるようになったことが転機でした。
その後、中堅IT企業へ転職し、技術営業、プロジェクトマネジメント、委託先管理、開発業務を担当しました。
個人売上8,000万円を達成し、AWS資格も取得してフルスタックエンジニアとしての自信も得ました。
一方で、
「提供者側としては十分経験した。次は利用者側を知りたい」
という思いが強くなり、事業会社への転職を決意しました。
現実① 技術的に正しい案が採用されるとは限らない
私が最も驚いたことです。
IT企業では論理や技術的合理性を重視する場面が多くあります。
しかし事業会社では、
- 過去の成功体験
- 部門間の力関係
- 発言力のある人物の意見
が意思決定に強く影響します。
エンジニア目線では違和感があっても、
「この方針で進める」
と決まることがあります。
事業会社では正論だけで物事は動きません。
特に誰が発言力があるのか社内政治を理解することが重要です。
現実② IT予算は思ったほど自由ではない
転職前は、事業会社では予算を確実に使い切るものだと思っていました。
実際、年度初めには大きなIT投資計画が策定されます。
しかし利益状況の変化や経営環境の悪化によって、予算削減が発生することも少なくありません。
私の経験では、
「年度初めに計画していた投資の半分程度しか実行できなかった」
というケースもありました。
IT投資も会社の利益の上に成り立っています。
現実③ 人間関係の影響が想像以上に大きい
IT企業時代は人間関係で大きく悩んだ経験はありませんでした。
しかし事業会社では、同じ組織で10年、20年と一緒に働いている人も多くいます。
その結果、
- 過去の成功体験
- 過去のトラブル
- 既存の人間関係
が現在の業務にも影響します。
マネジャーになって強く感じるのは、
「仕事の正しさ」だけでなく「従業員間・部門間の関係性」も成果に直結する
ということです。
現実④ ベンダー任せではプロジェクトは成功しない
事業会社へ転職する前は、
「利用者側だから楽なのでは?」
と思っていました。
しかし実際には逆でした。
事業会社が主体的に品質を管理しなければなりません。
要求整理
仕様決定
受入テスト
契約調整
これらを適切に実施しないと、プロジェクトは簡単に失敗します。
事業会社の従業員はプロジェクトにおける品質管理の理解が乏しく、利用者側には利用者側の難しさがあります。
現実⑤ 会議がとにかく多い
これは入社直後に衝撃を受けました。
IT企業時代は、
- 開発
- 設計
- レビュー
など実作業の時間が比較的確保されていました。
しかし事業会社では、
- 部門調整
- 投資判断
- 稟議
- ベンダー調整
などの会議が非常に多く、一日中会議の日も珍しくありません。
現実⑥ ITスキルだけでは評価されにくい
事業会社では、
「技術に詳しい人」
よりも
「組織を動かせる人」
が評価される傾向があります。
ある程度の技術力は前提ですが、
- 調整力
- 交渉力
- 説明力
が昇進には重要です。
現実⑦ 経営視点を学ぶ機会が増える
これは転職して良かったことの一つです。
マネジャー昇格時には、
- ロジカルシンキング
- GMAP
- コンプライアンスリスク理解
- 役員面接
などを受けました。
ITプロジェクトだけでなく、
- 利益
- 投資効果
- 経営戦略
を考える機会が増え、自分の視野が大きく広がりました。
現実⑧ 働き方の自由度が高い
IT企業時代は準委任契約が多かったため、月の稼働量は決まっていましたが、事業会社ではさらに自由度が高まりました。
成果を出すことが前提ではありますが、
- スケジュール管理
- 業務優先順位
- 出社するか在宅勤務するか
- 諦める仕事はなにか
を自分で決められる場面が増えました。
現実⑨ 成果が認められれば大きく成長できる
私は入社時、前職とほぼ同水準の条件で入社しました。
しかし、その後DX推進部門で成果を出し、30代半ばでマネジャーへ昇格することができました。
おかげさまで収入は入社4-5年で倍になりました。
会社によりますが、実力主義の環境では成果が正当に評価されるケースもあります。
現実⑩ 事業会社にも向き不向きがある
私よりも後に中途採用で入社しているのに、すでに辞めた方も何名かいらっしゃいます。
事業会社への転職をおすすめしたい人は、
- 調整業務が苦にならない
- 経営視点を身につけたい
- ビジネス全体に関心がある
人です。
一方で、
- 技術を極めたい
- コーディングが好き
- 最新技術を追い続けたい
- ひとつのプロジェクトに専念したい
という人には、SIerやIT企業の方が向いている場合もあります。
まとめ
私は事業会社へ転職したことを後悔していません。
一方で、転職前に想像していた世界とは大きく異なっていました。
事業会社で評価されるのは、技術力だけではありません。
- 利害関係者をまとめる力
- 組織を動かす力
- 経営視点で判断する力
が重要になります。
もしあなたがSIerやIT企業で経験を積み、
「次のキャリアとして事業会社も選択肢に入れたい」
と考えているなら、ぜひ技術力に加えて調整力やビジネス視点も磨いてみてください。
その経験は、事業会社で大きな武器になるはずです。
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